知的財産権侵害でのamazonアカウント停止を防ぐには?(専業プロの実体験)

近年amazonマーケットプレイスのコンプライアンス規制が強くなっています。特に個人が新規参入するには中々厳しい世界となっております。新品を販売すると高い確率で製造元やブランド登録者から知的財産権関係のクレームを受けるという状況です。

amazon販売のトレンドがかつての新品転売から中国OEMやメーカー・卸仕入れに移行しているのはそうした背景があるようです。ただ中国OEMは売上が立つまで時間がかかりますしメーカー・卸仕入れは資金が必要です。

そこで中古転売が見直されるようになりました。個人でも低資本で始められますし売上を立てるのに何か月もかかりません。FBA出てくる前は元々amazonマーケットプレイスは古本の転売から始まったので先祖返りしているともいえます。

中古なら新品のように知的財産権関係のリスクもないといわれてますが実際はどうでしょうか。自分は14年ほどメディア系(CD・DVD)の中古販売を続けてきました。確かに新品よりもリスクは少ないかもしれません。ただ長年販売していると中古でも様々なリスクがあることがわかります。

今回はamazon中古販売における知的財産権上のリスクと注意点について自身の経験を交えながらお話したいと思います。中古メディア系に限るのでかなり偏った分野ですが新品や中古の他の商材にも通じる部分はあると思うので出来るだけ関連付けて紹介していこうと思います。

中古でも知的財産権侵害のリスクはある

新品商品をamazonで販売しているとメーカーやブランド登録者からクレームを受けやすくなります。勝手に新品を販売されるとメーカー保証が受けられなかったり値崩れを起こしてブランド価値に傷がつきます。メーカーやブランド登録者の立場からすると当然だと思います。

さらに流通ルートが不明なため偽物が混じっている可能性もあります。真贋調査で仕入れルートの正規証明を求められるのはこのためです。

またamazonの規約でも個人から仕入れたものを新品で出品することは規約違反になりました。これも流通ルートが不明なためです。こうした背景からamazonでの新品販売は危ないという風潮になっています。

メーカーが偽物に神経を尖らすのは言うまでもなく自社の正規品販売に悪い影響を与えるからです。そういった意味では中古だと利害がバッティングしにくいのでリスクが少ないのは確かだと思います。

ただ長年中古を販売してきた経験からするとメリットはそれくらいしか感じません。その他の知的財産権に関しては中古でもコンプライス上のリスクはあります

自分もamazonがコンプライアンスに厳しくなった2017年頃から知的財産権に関する規約違反の通知をいくつも受け取ってきました。

それでもアカウント停止にならなかったのは中古だからというよりもアカウント運用歴が長かったからというのが大きいと思います。運用歴が短かったらどうなっていたかわかりません。

中古でも知的財産権に関係した規約違反は回避不可能

結論から言うと中古でも知的財産権に関係する規約違反を防ぐことはできません。amazonで問題となる知的財産権侵害とは正確には知的財産権侵害疑い・知的財産に関する苦情だからです

疑いを持たれたり苦情を寄せられること自体が規約違反になります実際に権利侵害があったかは関係ありません。だから回避不能というわけです。

アカウント健全性ダッシュボード内の規約の遵守の項目

中古で知的財産権に関係する規約違反が発生するきっかけ

権利者がamazonの申告フォームで知的財産権侵害の申し立てを行う

通知メールの件名(2021年現在)

  • Notice: Policy Warning

※前年(2020年)までは通知: アカウントポリシーご確認のお願いという件名でも来てました。

アカウント健全性ダッシュボード上のアラート

  • 知的財産に関する苦情

権利者は知的財産権の侵害を申告する専用フォームを利用して申し立てを行います。

注意すべきはセラーではなくASINに対して申告が行われる点です。各セラーが新品と中古どちらを販売しているかは関係ありません。※セラーに対して警告する場合は権利者・代理人が直接メールを送ります。

amazon経由で申告が受理されるとこういうメールが送られてきます。

モザイクでわからなくなってますが権利者とメールアドレス、登録商標(商標権の場合)と申し立て番号が記載されています。

注意すべきはamazonは申告を受理しただけで権利侵害を認めたわけではありません。その辺りは当事者同士で話しあって下さいというスタンスです。ただし申告が受理された時点でアカウント健全性ダッシュボードの知的財産に関する苦情がカウントされます。

申告が行われるとその商品を出品中はもちろん過去に出品して在庫ファイルに出品情報が残っている場合も対象となります。出品情報が残っているということは再出品の意志があるという理屈のようです。

ちなみに自分もフォームを見るまで知らなかったんですが申告フォームを通じて独占権侵害の申し立てはできません。

ただし偽物(模造品)の申し立てはできるので相乗り出品を排除して結果的に独占権を守ることはできます(すべて受理されるわけではないようですが)。新品を出品すると真贋調査が来やすいというのも偽物の申し立てを受けやすいからだと考えられます。

amazonの自動検知で商品ページが知的財産権侵害の疑いありと判定される

メールの件名(2021年現在)

  • 必要なアクション: Amazonの出品者としての出品が停止となりました

※今年初めまではAmazon.comでのあなたの出品に関する重要な情報という件名でも来てました。以下のものとは文面は違います。

アカウント健全性ダッシュボード上のアラート

  • 知的財産権侵害の疑い

こういう長いメールが来ます。

amazonは普段から知的財産権侵害の疑いのある商品ページを自動検知して削除を行っています。権利者から申し立てを受けた時と同じで該当商品を出品していたり過去に出品して在庫ファイルに出品情報が残っていると出品は停止され知的財産権侵害の疑いとしてカウントされます

いわば予防的処置で権利者の申し立てによるものではないので知的財産権に関する苦情に比べると深刻度は低いです。ただamazonが重視する知的財産権関係なのは確かなので出来るだけ素早く対応する必要があります。

知的財産権侵害の疑いのある商品ページとはだいたいが商標権絡みです。タイトルや画像・商品説明が問題となるケースが多いようです。

出品時に注意していても商品ページはあとから作成者が編集できるので事前に防ぐことはできません。通知があったらその都度対応するしかありません。

購入者がamazonに模造品・海賊盤のクレームを入れる

この場合は商品の信頼性に関するお客様からの苦情のアラートが点いた上でamazonから真贋調査が来るそうです。長年中古販売してますがこのケースは遭遇したことはありません。中古を購入してる時点であまり偽物を気にしないお客さんが多いということだと思います。

権利者からの申し立てには365日年中無休で対応

知的財産権関係の規約違反において最優先で対応する必要があるのが権利者からの侵害の申し立てです。根拠がないわけでなくamazonのメールにはそのことを伺わせる記述があります。長いですがamazonのスタンスが分かる重要な記述なのでそのまま引用します。

当サイトは知的財産権の侵害に対する申し立てを深刻に受け止め、現在、出品者様のアカウントの審査を進めさせていただいております。出品者様の商品についてさらに問題に関するご連絡が寄せられた場合には、直ちにアカウントを閉鎖させていただくことがあります。

ちなみに審査をクリアした後に再度申し立てを受けてしまったのですが表現は若干穏やかになっています。しかし直ちにアカウントを閉鎖という物騒な文言は残ります。

当サイトでは知的財産権の侵害に対する申し立てを重大な問題であると考えております。出品者様の商品についての問題に関するご連絡がさらに寄せられた場合は、直ちにアカウントを閉鎖させていただく可能性がありますのでご了承下さい。

いずれにせよ直ちにアカウントを閉鎖という強い文言があるのは権利者から申し立てを受けた場合か真贋調査くらいです。それ以外の規約違反の通知では見かけません。

文面からamazonが権利者からの知的財産権侵害の申し立てに神経を尖らせていることが伺われます。セラーは意向を汲んで権利者の申し立てには迅速に対応する必要があります。しかしあくまでも申し立てなのでいつ来るかは予想ができません

土日祝日関係なく年中無休でアカウント健全性ダッシュボードを確認する必要があります。申し立てがあれば直ちに在庫ファイルからSKUを削除しamazonと権利者に連絡を入れないといけません。

amazonは規約違反に迅速に対応するセラーを評価する傾向があります。休みの日には一切仕事のことは考えたくないという人はamazon販売には向かないかもしれません

amazonでは出品状態にするかは自分で設定できますがamazonが定義する営業日はカレンダー通りです(テクサポに確認しました)。休止状態でも問い合わせがあれば返さなければなりません。例えば金曜に問い合わせがあった場合は遅くても月曜日には返答する必要があります。

違反を起こさないのでなく起こることを前提にしていかに迅速に対応できるかがアカウント維持のカギになります。

中古でも真贋調査は行われる

中古でよくあげられるメリットとして真贋調査の対象になりにくいというものがあります。確かにメーカーがamazonに依頼する形の調査は少ないと思います。ただ中古でも購入者からのクレームをamazonが商品の信頼性に関するお客様からの苦情と判断すれば真贋調査の対象となります。

またランダムピック型の真贋調査は一般的に新品を扱う新規セラーに来やすいと言われていますが中古でも対象となります。自分もアカウント運用を開始してから10年経過してから来ました。

その頃はメディア系の海賊盤が出回っていたのでその影響かもしれません。状況次第では今後も中古が対象になることはあるかもしれません。

現在の真贋調査は新品に対して行われるものというイメージが強いですがamazonの方針は今後どうなるか分からないので中古だからといって安心はできないと思います。

2020年の夏頃に中古本に真贋調査が入ってちょっとした騒ぎになりました。中古本に偽物などあるはずがないとプチ炎上しましたが本にも偽物は存在し得ます。中古だから本物の証明をしなくていいというのは理屈が通りません。証明しようがないというのが正しいと思います。

真贋調査の本来の目的は模倣品・海賊版の取り締まりなので中古も対象となります。現状ではお目こぼしを受けているだけと解釈するべきでしょう。

中古でも著作権侵害の申し立てを受ける

中古品の転売は基本的には合法です(中古ゲームソフト事件判例)。一度販売されるとその時点で著作権は消滅(消尽)して転売することができます。このため中古品はamazonでも著作権侵害の申し立ては受けないと勘違いしがちです。

実際のところはどうでしょうか。メディア系商材を扱っているとこういうメールが届くことがあります。

映像メディアの場合はパブリシティ権(肖像権・氏名権)絡みで申し立てがくることもあります。販売差し止めが目的なことが多いので本来はリコール案件ですが法律的には無理筋でも権利侵害で申し立てが来ます。

申し立ては先ほど挙げた知的財産権の侵害を申告のフォームを介して行われます。以下は侵害申し立ての部分を拡大したものです。侵害されたとする権利の種類で著作権を選んだ場合の権利侵害の詳細のプルダウンメニューです。

メニューを見ればわかりますが著作権侵害の申し立ては商品商品ページに対して行われるので新品も中古も関係ありません正規品であっても著作権を侵害する(例えば無断でイラストをジャケットに使用する等)場合はセラー全員が出品停止になります。

申し立ては受理された時点で出品停止になります。amazonは実際に権利侵害があったかは審査せず要件さえ揃っていれば受理します。後は当事者同士で話合って下さいというスタンスです。そのため法律的には無理筋な申し立てでも出品停止を目的として利用されます

本来中古販売は著作権上は問題ないですが申し立てを取り下げる交渉をしても得るものが少ないので法的には問題なくてもそのまま受け入れることになると思います。

中古でも商標権侵害の申し立てを受ける

amazonにおける商標権侵害の申し立てというと独占権の関係で新品をイメージしがちですが著作権と同じで中古も対象となります。

申し立てがあるとこういうメールが届きます。

こちらも先程の申告フォームが使われます。以下は侵害されたとする権利の種類で商標権を選んだ場合の権利侵害の詳細のプルダウンメニューです。

著作権と同じで商標権侵害の申し立ても商品商品ページに対して行われることがわかります。

すでに述べましたがそもそも申し立てはASINに対して行われるので各セラーが新品中古のどちらを出品しているかは関係ありません。

こちらも著作権と同じで申し立てが受理された時点ですべてのセラーが出品停止になります。実際に権利侵害があるかは二の次で相乗り排除を目的として利用されることもあります。

権利者から申し立てを受けた時点で”知的財産に関する苦情”としてカウント

権利者からの申し立ては受理されるとその時点で出品は停止となり知的財産に関する苦情としてカウントされます。苦情というのがポイントで実際に権利侵害があったかは関係ありません申し立てがあった時点でペナルティを受けます。

苦情の詳細は通知には書かれてません。amazonは当事者同士で解決してくれというスタンスなので権利者か代理人に問い合わせなければなりません。

申し立てを取り下げて貰えない限りアカウントヘルスへの悪影響は残ります。権利者に連絡して取り下げてもらうこともできますが連絡先はメールアドレスしか提示されません。

特に個人の場合はなかなか連絡が取れません。やっと取れたとしても申し立てを取り下げてもらうには相手にも手間がかかるので中々お願いするのは難しいです。向こうは基本喧嘩腰ですから。

新品だと食い下がってもいいかもしれませんが中古は一点ものが多いので何度もやりとりしても割に合いません。殆どの場合は著作権と同じく実際に権利が侵害されているか関係なくそのまま出品を取り下げることになります。

在庫ファイルから出品情報を削除し権利者・amazon双方に削除したことと今度出品しない旨のメールを送信するという対応を取ることになります。※権利者から返信がなくてもamazonからは許してもらえることもあります

中古でもamazonの自動検知により”知的財産権侵害の疑い”を受ける

権利者からの申し立ての他にamazonの自動検知でも規約違反は生じます。この場合は知的財産権侵害の疑いのペナルティが課されます。

知的財産権侵害の疑いは知的財産権を侵害している可能性のある商品ページをamazonが自動検知して削除が行われた際に発生します。

amazonは権利者の申し立てを受ける前に日頃からこうした問題のあるページを監視して予防的に削除しています。出品中はもちろん在庫ファイルに該当商品に紐づいたSKUが残っていると商品ページを削除した旨の通知が届きます。

商標登録された用語が使用されていますが、商標登録された用語の権利所有者とブランド名が一致しません。

平たく言うと商品ページで商標が不正に利用されていたということです。繰り返しになりますが出品中はもちろん過去に出品して在庫ファイルに出品情報が残っていた場合も規約違反になります。

中古だと既存の商品ページに相乗りで出品することになるので問題ある商品ページに出品してしまうリスクがあります。

他にも出品したページで使用されていたブランド名に問題があると知的財産権侵害の疑いとしてカウントされます。これも出品したこと自体が悪いという理屈です。

該当するASINに使用されたブランド名が、他者の知的財産権を侵害している商品を大量に販売するために使用されていました。

相変わらず翻訳調で何のことやらわからないのでテクサポに聞いてみました。

登録されていたブランド名が他と誤認させるものだったようです。中古品でも取引されるような商品はブランド名が商品ページで確認できない場合もあります。また中古だと基本的に相乗り出品になるので出品時に確認はできません。

商品ページにブランド名がない場合は一度出品した後に在庫管理画面から詳細の編集を選び重要情報のタブで確認する必要があります。

在庫管理画面右端の詳細の編集をクリック

重要情報タブです。

中段やや上のbrand_nameがブランド名です。ちなみにその下のmanufacturerがメーカー名です。こちらは商品ページの登録情報でも見られます。

このようにブランド名も一応見れなくもないですが出品した後に一々確認するのも面倒です。

それでも侵害理由が書いてあるだけまだマシです。単に知的財産権侵害の疑いありと通知が来てよくわからないままペナルティを課せられることもあります。

“これは出品者のAmazon知的財産権ポリシーに違反します”の”これ“の部分がメール中に書いてありません。こうなるともう対処のしようがありません。どんなに注意しても知的財産権侵害の疑いも防げないということがわかると思います。

中古だと”知的財産権侵害の疑い”を受けても商品詳細ページを修正できない

知的財産権侵害の疑いの通知メールには出品情報を回復するにはどうすればよいですか?という項目があります。

商品詳細ページを修正すれば再出品できると書いてあります。

しかし既に述べたように編集権限は最初に商品ページを作成したセラーにあるので基本的に相乗り出品者は修正できません。販売実績や売上が大きいセラーだと修正できるそうですが。

このように中古の場合は商品ページを修正出来ないことが殆どなので在庫ファイルから出品情報を削除してアマゾンに報告するしかありません。この時テクサポに修正できない旨を知らせればアラートを削除してくれることもあるそうです。

中古で唯一回避できるのは製造元からのクレーム

このように中古でも知的財産権関係のリスクをゼロにすることはできません。新品に比べてリスクを抑えることはできてもゼロにはできないのです。

限りなくゼロにできるのはメーカーからのクレームだと思います。中古だとメーカーと利害がバッティングしにくいのでクレームを受けることはほぼありません。プリンタのインクのように正規品を改造して売ったりしたら問題になると思いますが。

どちらかというと製造元というより関係者から黒歴史だから販売停止にして欲しいというクレームというかお願いが来たりします。

中古が安全な本当の理由

以上中古でも知的財産権侵害のリスクは残るということを見てきましたが、それでも新品よりはリスクは少ないと思います。それは中古だからというよりロングテール商品だからだと思います。

ざっくりいえば新品販売は売れ筋商品を短期間で大量に売りさばくというスタイルが取られます。同じ商品に殺到するため製造元も含めてライバルを蹴落とそうという心理が働きます。その際に知的財産権が利用されることになります。

一方中古はロングテール商品を長い期間かけて売ります。そのため目立ちにくいのです。例えば一年に数回しか売れないような商品のライバルを蹴落としても売上にはほとんど影響はないでしょう。蹴落とした所でそもそも売れ残る可能性もあります。中古は売れ残りも見越して仕入れています。

中古でもやろうと思えば新品で行われているように販売停止やアカウント停止に追い込むことは可能だと思います。ただ短期間に大量に売れるようなものではないので単に目を付けられにくいだけなんだと思います。

逆にいえば中古でもライバルが殺到するような商品だと蹴落とし合いが始まりアカウント停止のリスクは高まるかもしれません。目立たずに稼げる方法を編み出したり目立っても真似できないほど強固な参入障壁を作ることが新品中古問わずアカウント維持のカギになると思います。

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