amazonの注文商品(CD・DVD)の発送は日本郵便の国際eパケットを中心に使っています。最初はEMSより補償が薄く時間もかかるため不安でしたが意外と問題なく利用してきました。
クレームが全くないというわけではありませんが特定の国が続くようなことはありませんでした。しかし今年(2021年)の春くらいからでしょうか何故かオランダからの問い合わせが目に見えて増えました。
どうやら現地の通関手続きで輸入取止めという状態が発生しているようでした。最初は原因がわからずただ無事に税関を通過するのを待つしかありませんでした。
しかし郵便局の窓口の方の一言を切っ掛けに対策を取ったところこうした現象は発生しなくなりました。今回はオランダ税関で輸入取止めが発生する原因とその対策についてご紹介したいと思います。
追跡ステータスの”輸入取止め”は輸入手続きの停止の意味
ある日オランダのお客さんからこんな画像が添付されたメールが来ました。荷物が税関で止まってるから助けて欲しいということでした。
amazonのステータスは配達が完了できませんという趣旨のことを言ってます。
お客さんは”retention”という聞きなれない言葉を使っています。保持という意味ですが物流の文脈だと停滞という含意もあります。輸入取止めに当たる言葉でしょうか。
海外のお客さんは配達期限に絡めて連絡してくることが多いです。日本人のように「普通はこんなにかからないよね?」みたいな曖昧なクレームの入れ方はしません。いつ発送しますかみたいな聞かれ方はしますが。※受け取り後に販売者に付ける評価はまた別です。
何故なら「普通」というのは売買契約時に明文化されていないからです。あくまで前もって定められた条件(ここでは配達期限)に反すると理詰めで攻めて来ます。契約社会の考え方です。
それが今回は配達期限の大分前です。これはいつもと様子が違うぞということで郵政のサイトで調べてみるとこんな状態になっていました。
輸入取止めという見慣れない文字があります。5月4日から止まっていて以降amazonの表示も”Delivery on Hold“となったようです。それに気付いてお客さんが連絡してきたというわけです。
日常的に国際郵便を使ってる人なら分かると思いますが日本から海外の税関に直接問い合わせることは殆どできません。現地の郵便局も税関に聞き取り調査をするだけで何が起こっているかは直接調査はできません。違う組織ですからね。
結局お客さんと何度かやり取りしているうちに輸入手続きが再開され無事荷物は届いたのですが、この一件を切っ掛けに今年に入ってからやけにオランダからの問い合わせが多いことに気づきました。
そこで手元に残っていた配達ラベルを元に約半年間の約20ヵ国200件分の国際eパケットの配達状況を確認しました(アメリカとカナダはここ半年国際eパケットは送れないので除外してます)。
するとこの現象はオランダのみで発生していることがわかりました。しかもそれが複数回なのでどうやら偶然ではなく人為的なもののようです。ただ何度も続くと現場の検査官が思いつきでやっているようにも思えません。何か役所全体の意図があるんでしょうか。
ちなみに国際郵便でスムーズに行く場合はこんな感じです。
同じEUのフランスですが通関手続きも表示されず1週間程度で届いています。
普段から国際郵便を利用してる方はご存じでしょうが通関手続きは結構水物だったりします。扱う荷物が膨大なので通常は一部を抜き打ちで検査するという感じになるのだと思います。
オランダの話に戻りますと以前から問い合わせはあったのですが、しばらく待っていると届くことが多く追跡ステータスをじっくりと見ることはありませんでした。
今回は複数回問い合わせがあったので何度も眺めているうちに輸入取止めに気づいたというわけです。
輸入取止めについて調べると一般的には禁制品を持ち込もうとした場合に発生するということでした。ただ送ったものは正規のCDで禁制品には当たらないはずです。内容も過激なものではないです。上で画像を掲載していますがジャケットもうなじは出てますが特に際どいという訳でもありません。
内容物に問題がないとすると次に考えられるのは配送ラベルと提出書類です。
一般的には国際eパケットで商品を送る場合はインボイス不要
普段から配達が完了するまで配送ラベルの控えを保管しているので不備がないか確認しました。しかしお客さんに住所を確認してもらっても問題はありませんでした。
荷物もA5サイズの封筒で規定の範囲内、内容物も正確に申告してます。また当時はまだ日本のamazonはVATを徴収してませんから識別番号もありません。
配送ラベルに問題がないならあと考えられるのは提出書類の税関告知書とインボイスです。ただ国際eパケットでは税関告知書は条件を満たした場合しか出力されません。
その条件も送り状に内容品が記載しきれない場合と価格が高い(300SDR以上)場合です。国際eパケットに関しては提出したからといって通関手続きがスムーズになるという訳ではなさそうです。
一方でインボイスは条件に関係なく任意で出力できます。
一般的には国際eパケットではインボイスは不要とされています。あくまで任意という扱いです。
実際に国際郵便を差し出す際の公的な条件を定めた “国際郵便条件表“を見ても殆どの国で不要です。ただ今回の件でよく見てみると少数ながらインボイスが必要な国がありました。代表的な国はスペインです。
通常郵便物(国際eパケットも該当します)の4.必要な記載、税関用紙等のその他必要書類の項目で”商業インボイスを添付すること”と明記されています。
「これはインボイス関係だな」とオランダの同じ項目を見てみました。ところが必要とは書いてありません。
オランダでは”商業上の目的で発送される物品”は禁制品
インボイスは関係ない…。振り出しに戻りしばらく考え込んでしまいました。オランダ… オランダ… 何かあったっけな…?しばらくすると春先に窓口の人がこんなことを言っていたのを思い出しました。
「このオランダ宛ての荷物は商品ですか?」
普段何も言わないから印象に残っていたんですね。しかも複数回。その時はお金は絡んでるけど個人間の取引だから商品ではないですと答えていました。
でもよく考えれば個人間だろうとお金が絡めばそれはもう商品なんですよね。内容品種別も贈物で送ってました。
なんで急にこんなこと言うんだろう?とじっくり禁制品を見てみると…。
禁制品に商品等とあります!”商業上の目的で発送される物品“って範囲が広すぎです。鎖国でもするつもりでしょうか。
中古品とVAT納入済みであることを税関にアピール
ただ今までは普通に送れていました。今年の春から個人間取引も商品と見なすという方針になって怪しいのはどんどん輸入取止めになったのかもしれません。
確かにお金が絡んでるので商品と言えるけど”商業上の目的で発送される物品”とまで言われるとちょっと違うような…。釈然としないものがあるのも事実です。
落とし処としては中古品(USED)であることをアピールすることにしました。
それと商品価格をきっちり端数まで書いて税金逃れをせず正直に申告してる姿勢を示します。安く申告して税金逃れるのは常套手段ですからね。
そもそもamazonで販売してれば7月からVAT徴収されてますから税金逃れ目的で価格を誤魔化す必要もありません。申告しても損することは何もないですからしっかり識別番号記載しました。いっそ赤線引こうと思いましたがかえって怪しいのでそれはやめました。
こうして税関にアピールした結果…
対策が効いたかは断定できませんが少なくとも輸入取止めが表示されることはなくなりました。ただ相変わらず足止め食らってるのでまだ監視の目は厳しいようです。税関って裁量の部分が大きいから推測で語るしかないんですよね。
オランダの他にドイツ、ベルギー、オーストリア、スウェーデンが厳しい
今までは追跡データは配達の完了と所要日数しか確認してなかったのですが、オランダの件をきっかけにEU限らず各国じっくり見ることでそれぞれの税関の傾向が見えてきました。なんとなくそんな感じはしてましたがEU圏はやっぱりチェックは厳しめです。
よく考えたらオランダってマーストリヒトがある国なんですね。結びつきが強いベルギーのブリュッセルにはEC時代からの本部もあります。あの辺りはいわばEUの象徴的な場所。
ベルギーの税関もほぼ確実に通関手続きのステータスが入ってしかも長期化しやすいことがわかりました。
両国は特にEU圏外から入ってくる荷物に敏感になっているのかもしれません。
オランダ・ベルギーに限らずEUは通関手続きのステータスが表示されることが多いです。特にドイツはほぼ毎回表示されるので税関が厳しい国と言えそうです。ただ両国と違って大体2-3日で終わります。
オランダ・ベルギーほどではないですがオーストリア、スウェーデンも厳しいのがわかりました。ざっくり言えばゲルマン系。何か生真面目なことも関係してるのでしょうか。
一方でフランスはほとんど通関手続きは表示されません。追跡ステータスは必ずしも正確ではないので実態を反映してるかはわかりませんが少なくとも他国との比較で一つの参考にはなると思います。
ただEMSだとほぼ税関検査のため税関へ提示と表示されるので緩いのは国際eパケットの場合に限るようです。
EU宛てに国際eパケットを送る場合の対策
オランダに限らずEUは税関のチェックが厳しいという前提で以下のような対策を取った方がよさそうです。※フランスは国際eパケットに関しては今のところ緩そうですが今後も変化しないとは限りません。
1.VAT識別番号を記載する
2.個人間取引であっても内容品種別は贈物でなく販売品と申告する
3.公式には必要とされていなくてもインボイスを付ける
正確に申告して税関職員の心証を良くします。いままでなあなあにやってました、すみません。ここまでアピールしてダメだったらあとは無事通過するのを待つしかありません。
全体的な傾向としては英米・東アジアは緩くEUは厳しい
今回はオランダをきっかけに各国の税関を観察するいい機会になりました。EU以外にも英米、東アジアの傾向も大まかにつかめました。あくまで日本から中古のCD・DVDを送った場合というかなり限られた話ですが。
ものすごくざっくり言えば英米・東アジアは緩くヨーロッパ大陸は厳しいです。一般的な感覚としてもなんとなくそうだろうというところですが実際のデータとして見れたのはよかったです。
アメリカに関してですがコロナの影響で今年に入ってから国際eパケットは送れないのでEMSのデータになりますが一応の参考にはなると思います。こちらは高い確率で税関検査のため税関へ提示のステータスが入ります。ただ殆どが数日で終わるためEUより監視の目は緩い印象があります。
東アジアは全体的に緩い傾向があります。台湾、香港、シンガポールはほとんど通関関連のステータスは入りません。一方で韓国は毎回通関手続きのステータスが入ります(EMSの場合は代わりに税関検査のため税関へ提示が表示。並存することもあります)。ただほとんど当日で終わることもわかりました。
中国とタイは通関手続きは入りませんが代わりにほぼ毎回税関から受領というステータスが入り東アジアの中では比較的厳しいことが推測できます。
全体的な仮説としてはEMSより国際eパケットの方が監視が緩いということもあるかもしれません。
なおノルウェーとフィリピンは国際eパケットだと国内だけしか追跡できません。両国はEMSで発送した方がいいことがわかりました。
税関行政は国際情勢とか国内の政情によって左右されるので今後はどうなるかわかりません。今回のデータも2021年前半に限った話だとご理解下さい。また必ずしも正確なデータが反映されるものではないですが普段から追跡ステータスを観察して何か変化があったらまた報告していきたいと思います。
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